地震に強い家づくり
を考える。

~Strong house against earthquake~


「家マガ」読者アンケートでも、常に関心が高いのが「地震に強い家」。
今年7月の新潟県中越沖地震では、長野県も大きな被害を受けました。
もう、地震は、いつ・どこで起きてもおかしくない身近な問題です。
建築基準法でも耐力(耐震強度)の等級1レベルは義務づけられているので 昔に比べれば、グンと性能は向上しています。でも、本当にそれだけで安心なのでしょうか?
すべて専門家にお任せするというのでなく、自分たちにもできることはないのでしょうか?
いざという時のためにも、今回は地震対策を中心に家づくりを考えてみましょう。

まずは地盤・地質を知っておこう!

どんな家を建てるか、を考える前に、まず調べておきたいのが地盤の強さや地質構造。昔、地震で段差ができた跡があるとか、埋め立てられた土地かどうか、あるいはその他の災害のあった土地かどうかなど、そういう家を建てる場所の環境によって、どのぐらいのことまで考えて建てれば良いかが違ってきます。
「長野県には無数の断層が走っているんです。なかでも、松本の牛伏寺断層は、今後30年以内にマグニチュード8クラスの地震が発生する可能性が高いとされるもののひとつです。ただ実際には、そういう断層の上にも家が建てられてしまっているんです」。
と、ちょっとショッキングな現実を語ってくださったのは、佐久の建築家吉田さん。
この機会にぜひ図書館やインターネットなどで、今住んでいるところや、これから住みたいと考えている地域の地盤の歴史についても調べてみましょう。
吉田さんは、デザインやインテリアを考える前に、まず「安全な家」を考えるべきだ、と言います。「これからの時代においては、地震に対して強い家を造ることは、その地域社会に対してのひとつの責任でもあると思います。そして建物のライフサイクルを考えれば、地震に強い家を造ることはロハスのひとつでもあるんです」。

どこまで地震に強い家を考えたらよいか、建築家と相談してみよう!

国が定める耐震性の等級1とはどんなレベルかというと、「避難するための最小限の時間と空間が確保できる」ということだそうです。つまり「数百年に一度というような大きな地震の時でも、いきなり倒壊してしまうのではなく(主要構造部の倒壊防止)、命が助かるための時間や隙間が確保できることを目標とする最小限のことが決められている」というわけです。
現在の性能表示では、この等級1を基準にして、安全性や耐力を25%上乗せしたレベルというものを等級2、50%上乗せしたものを等級3と表示します。
ここで注意しなければいけないことは、法律が建物に被害が出ないことを保証しているわけではありません。必要に応じて、どの程度の耐力を上乗せするか、建て主側の考えも家づくりに反映される部分です。
「TVや雑誌でも、地震に強いとされる構造の家がいろいろ紹介されていますが、そのひとつ、免震住宅と言われるものは1軒あたりプラス300万~400万円ぐらい、新車1台分以上の負担増になります。でも、地盤や地質に関する資料や調査結果を基に、基礎の見直しとか、金物の種類・耐力壁の量や強度のアップを考えるという方法でも、坪当たり2~3万円位を上乗せすることで、耐震等級2あるいは3にもってゆくことが出来ます。これなら軽自動車1台分ぐらいの上乗せで済みますね」。
建築家や専門家にプランニングの段階から相談し、予算の中でできる限りの工夫をしてもらうことが大切です。なにしろ、安全のための工夫は目には見えない部分にあるのですから。
●地震対策の基本は<耐震・制震・免震>
 耐震 

建物の構造を頑丈に造り、
地震に耐えられるようすにする。

骨組みに筋違いを入れたり、壁パネルで支える構造など。揺れは上の階ほど大きくなり、家具も散乱する。就寝スペースと収納スペースを別の部屋とするのが理想的。
 制震 

建物自体が揺れを吸収しながら
振動を抑え込む。

建物内部に緩衝ダンパーなどを組み込み、揺れを抑える。建物自体に柔軟性を持たせることで、粘りを確保する。これからの高層マンションを購入する場合の決め手と成り得る。
 免震 

建物に揺れを伝えない。


積層ゴムやボールベアリングなどを基礎と土台の間に入れ、揺れを建物に伝えない仕組み。最新型では横揺れに対して震度7が震度4程度に軽減される。コストも掛かるが期待度も大きい。


「地震に強い家」ってどんな家?

鉄筋コンクリートだから強いとか、まだ新しいから大丈夫、と思いこんでいる人も多いと思いますが、一概にそうとは言えません。
「見た目がいくら素敵でも、安全性を考えた場合は、きちんと構造設計された上で建てた家でなければなりません。また、地盤が弱いところに建てなければならない場合には、それなりの地盤改良工事の必要性があります」。
今住んでいるところで、建て替えの必要がある場合などは、地盤についてももう一度調べてみましょう。もし問題のある地盤だとしても諦める前に、その敷地の条件に合った安全な家づくりとはどのようなものかを検討してもらって下さい。
いずれにしても、まずは自分の建てる家の環境をよく知ることからです。

地盤調査
基礎工事
構造耐力壁


安全な家をつくるために、自分でできること?

専門的なことはプロにお任せして、 自分たちにもできること、探してみましょう。 「家具や家電製品を固定すること。地震の時、倒れた家具の下敷きになってしまうことがあります」。また「安定した家にするには重心が低くて、上は軽いほど良いので、2階建てよりは平屋の方がいいとも言えます」。プロが言うには、地震に強い家のポイントは「基礎と耐力壁」だそうです。それらのバランスのよさが、踏ん張って立っていられる建物の条件なのだとか。
「どんなに足を踏ん張っても、人は2本足でしかありませんから、踏ん張った方向に対して直角な方向へはふらついてしまいます。建物も同じです、東西南北4方向へのバランスの良い耐力壁の配置が大事です」。
その上で、ピアノなどの重い物や、倒れそうな家具などは、専用の金物を使って床や柱に固定させましょう。家全体でも5~10万円位の予算で済むそうです。
その他に構造上大事なこととして「アンカーボルトやホールダウン金物、筋かい金物、羽子板ボルトなど、その他の釘や金物を全部含めても坪当たり4000~6000円位の範囲で収まるはずです」とのこと。
これらの金物が、どのような部分でどのように使われるのか設計者や現場監督に聞いてみましょう。また、現場に出かけて、実際に自分でも確かめてみましょう。

「家の性能は劣化する」ことを忘れずに!

ここまで耐震性にこだわって家を造っても、その性能や耐力が衰えてゆくのは仕方ないことです。木造の家ならば、基本となるのは天然自然の木ですから、蒸れたり腐ったりすれば当然のことながら、建物全体も脆くなってしまうでしょう。建てた時のままの強度を長く維持し続けることは大変なことです。でも、劣化の速度を遅くすることはできます。それは、日頃のメンテナンスとチェックです。水周りなど、脆くなっているところはないか、屋根やサッシュ廻りからの漏水はないか、シロアリにやられているところはないかなど、こうしたことは定期的にチェックし、早めに手入れをしておきましょう。
中越沖地震でも、築数十年になる家が筋かいや火打梁などで補強したことにより、同じような建物が大きな被害をうけた中、奇跡的にも倒壊を免れたという例もあります。日頃の手入れや、適切な耐震改修工事が家を守ったということです。
「一人一人が本を読んだり、情報を集めたりして勉強することも大切です。」と吉田さん。危機感をもってもう一度考え直してみることが、安全への第一歩なのかもしれません。
地震対策資料
地震対策に関する本や、
各市町村からは防災に関する資料が出ています。
★地震・防災について知りたいときには
住宅情報協議会の住まいの情報発信局
地震に強い住宅/賢い住宅ローン/住宅相談/各種情報リンク集
内閣府防災担当
予想される地震への対策について
総務省消防庁
地震や台風の被害状況など
気象庁
地震情報/火山情報/台風情報/新潟県中越沖地震特集など
国土地理院
地震予知連絡会の会議内容の報告など〉
財団人 日本建築防災協会
「誰でもできるわが家の耐震診断」
各県各市町村の耐震診断/耐震改修支援事業について



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