夏を涼しく暮らす・・・というと、まずエアコンと思ってしまいがちですが、わずか20~30年前まで、長野県では、まだまだエアコンがある家のほうが少数派でした。それでも夏はそこそこ快適に過ごせたのに、今では、エアコンなしでは過ごせない時代になってしまいました。

 できることなら、機械に頼らず、知恵と工夫で少しでも暑い夏を涼しく快適に暮らしたいものですね。「風を上手に取り込んでみることも大事ですよ」。今回お話を伺ったのはアトリエデフさん。アトリエデフは、自然素材にこだわった家づくりをすすめる工務店です。

 「家をつくるときには、風の通り道をよく考えて、 窓を開けるといいですよ。春から夏にかけては、窓を開ければ家中に風が流れるようにすると、ほら、こんなに気持ちがいいんです!」

 モデルハウス「木もれびの家」にもエアコンはありません。大きく開け放された開放的な窓から、階段の途中に設けた裏庭に通じる小さめの窓へ、爽やかな風が流れているからです。もちろん設計の段階から、風を考えて建てられているのです。

「エアコンを使うと窓を開けなくなるじでしょう。それは気持ちのいい暮らし方じゃないかもしれませんね」。人間が本来持っている機能・・・ 暑いときは汗をかいて体温調節をする、外から吹いてくる風に涼しさを感じる、そういう機能が現代では失われつつあるようです。

 あえて、夏はほどほどの暑さも自然と考え、少し汗ばむぐらいでもよしとする。そして窓を開けて、吹き抜ける風を楽しんでみる。これが「涼」を感じる第一歩かも。

 そしてもうひとつの工夫は、深い庇。「木もれびの家」のリビングの開口部には床からひと続きになった縁側のようなウッドデッキがあり、そこは半分ぐらい庇になっていて日陰をつくっているのです。家の中のようで、外部のような、ここは外と内とが混じり合ういい場所。窓を開け放っていても、庇があるのでなんとなく落ち着きます。

 「秋にはお月見もできますよ。雨が降っても吹き込まないので窓はあけたままで大丈夫」。

 そういえば、昔の家には、こういう縁側がありましたね。今、庇がほとんどない家がありますが、日本の風土にはこういう自然と共存できる空間が必要かもしれません。そして、庇が深いと安心感もあるけど、日影の部分ができて、やっぱり涼しい!

 やっぱり「土」の力。たとえ住宅密集地であっても、小さな中庭を設けること。これはけっこう大きな効果です。アスファルトの駐車場にするのであれば、採石を敷くとか芝を張るとか・・・。部屋をひとつ削ったとしても土の庭をつくってほしい。

 「お子さんの中には、素足で土に触れたこともないまま大人になる子も多いそうなんです。土は植物も植えられるし、水をまけばサッと涼しくなるし、風が流れるし、自然の力をうまく利用できるんです」。

 できたら広葉樹などの木々を植えれば清涼効果も大。1本の木がつくり出す木陰は、見た目にも涼しく、野鳥も飛んできてくれることも。秋には葉を落とし、冬には光も差し込む、まさに天然のクーラーになります。

 昔ながらの夏の風物詩・・・ 「よしず」や「すだれ」は、思っているよりずっと室内を涼しくしてくれます。ここに風鈴のチリンという音色が聞こえたりすれば、清涼満点!

 「家の外側に日影の隙間空間ができると、そこの外気温が下がるので涼しい空気が流れてきます。通りに面していても窓を開け放しにできるのもいいですよね」。

 マンションやアパートなどで建物自体に涼しい工夫ができないときは、昔ながらの和の道具を使ってみては? 見た目にも、また耳にも涼しさを演出できます。五感で感じる夏の涼をどうぞ。

取材協力  アトリエデフ
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